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第22章 白河 桜子
一緒に外に出て、大通りまで無言でぐんぐん歩いていく。

「あの、えっと…」

「帰りたいんだろ? タクシー拾ったら1人で帰れる?」

「あ、はい…」

「タクシー代は?出した方がいい?」

その人がポケットから財布を出しかけたから、

「あ!結構です!チケットがあるので…」

帰りが遅いときに使いなさい、と祖父から持たされたタクシーチケットをお財布から出す。

「そう、ならいいか。そのタクシー拾えたら僕は戻るから。」

「あの、ありがとうございます。助かりました。」

「別に。嫌がる女のコに無理強いするのは好きじゃないだけ。」

「あの、お礼は改めて…お名前と、連絡先伺ってもいいですか?」

「別に大したことしてない。」

「でも…」

「同じ大学だから、また会えるかもね、ミスキャンパス。」

その人はニコッと悪戯っぽい顔で笑った。

「…私のこと、知ってるんですか…?」

「ウチの学校で知らないヤツはいないだろ。いたらモグリだよ。」

その人はそう言った後、あっ、と反応して、道路側に身を乗り出して大きく手を振った。

「タクシー!」

偶々人通りが切れたところで、時間もまだ早かったからか、タクシーはすんなり停まってくれた。
私だけ乗るように促し、その人は運転手さんによろしく、と挨拶してじゃあね、と手を振った。結局、名前も聞けなかった…
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