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第22章 白河 桜子
義隆さんが入社予定の会社に問い合わせてくれたけど、社宅には空きがなくて。
結婚して社宅の割り当てのない人には家族手当が付くからそれで部屋を借りて、社宅の空き部屋待ちをすることにして、それまでは義隆さんの部屋で2人で住んだ。

入社して数ヶ月で、義隆さんの勤め先からそう遠くないマンションを借りて引っ越した。
時代が良かったのもあって、新卒でもお給料はそこそこあったし、何かしら名目をつけての手当てやらボーナスがあって、当面の生活には困らなかった。

私は経過も順調で、悪阻はそこそこあったけど、倒れたり入院したりすることはなく、仕事もしてないからのんびりと過ごして、10月に男の子を出産した。
義隆さんの一文字を取って、隆行と名付けた。

義隆さんは仕事が忙しくて、残業も多かったし、付き合いで呑みに行って、電車のある時間に帰ってこれずにタクシーで午前様、なんて日もザラだったけど、私たちの為に働いてくれている、と思えば文句なんて言えなかった。

1日の殆どを隆行と2人で過ごす。
友達も、相談できる人もいない。学生時代の友達は、大学を辞めたら自然と離れていって、連絡も取らなくなったし、連絡したところで、子育ての悩みなんか相談できるわけもない。

元々人見知りで、知らない人の中に入って行くのが苦手な私にとって、隆行を連れて公園で知らない親子連れに話し掛けて友達になる、なんていうのは不可能だった。
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