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第22章 白河 桜子
バイトを始めて1年が過ぎた。
仕事もこなれてきた頃、私は1人の男性と出会う。
最初はお客さんの顔なんて気にしてなかったけど。
お昼時、毎日と言ってもいいほど来る男の人で、流石に顔を覚えてしまった。
毎日お弁当を買いながら、この辺じゃここのがイチバン美味いよね〜、とか。俺ここのチキン南蛮めっちゃ好き。とか、人懐っこい顔で独り言のように言って行く。
でも、その人が来てなくて。
ただのお客さんなのに、もう来ないのかな、なんて思ったある日、また顔が見えた。
居た!と思ったら、レジで小銭を出しながら、
「俺のコト探してたでしょ、萩原さん。」
と上目遣いでニヤ、と笑われる。
「! 」
いきなり名前を呼ばれて、ビックリすると、彼はエプロンにつけた私の名札を指差した。
「…132円のお返しになります…」
手のひらに乗せたレシートの上に小銭を置くと、グッと手を握られて。反射的に手を引くと、ゴメン、とすぐ謝られた。
「…ありがとうございました」
「明日も来るからね〜」
お弁当の袋をユラユラさせて、その人は帰って行った。
仕事もこなれてきた頃、私は1人の男性と出会う。
最初はお客さんの顔なんて気にしてなかったけど。
お昼時、毎日と言ってもいいほど来る男の人で、流石に顔を覚えてしまった。
毎日お弁当を買いながら、この辺じゃここのがイチバン美味いよね〜、とか。俺ここのチキン南蛮めっちゃ好き。とか、人懐っこい顔で独り言のように言って行く。
でも、その人が来てなくて。
ただのお客さんなのに、もう来ないのかな、なんて思ったある日、また顔が見えた。
居た!と思ったら、レジで小銭を出しながら、
「俺のコト探してたでしょ、萩原さん。」
と上目遣いでニヤ、と笑われる。
「! 」
いきなり名前を呼ばれて、ビックリすると、彼はエプロンにつけた私の名札を指差した。
「…132円のお返しになります…」
手のひらに乗せたレシートの上に小銭を置くと、グッと手を握られて。反射的に手を引くと、ゴメン、とすぐ謝られた。
「…ありがとうございました」
「明日も来るからね〜」
お弁当の袋をユラユラさせて、その人は帰って行った。