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第22章 白河 桜子
言われてみれば、お金を置き忘れたこともあったかもしれない。家のゴミ箱に、お弁当の容器が捨てられてたから、1食千円もしないわよね、と思って、きっとお釣りがあったんだわ、お金がなくて困ったら流石に言って来るわよ、と高を括っていた。
まさか、残りをマンガやお菓子に使ってしまって、ない時は万引してたなんて、考えもしなかった。
家に帰って、隆行は寝かせて、義隆さんと2人になった。

「…男か」

「…………」

「答えろ。男がいるのかと聞いてる。」

「…………」

「答えがないのは肯定とみなす。反論は?」

「…………」

黙って項垂れた私に、義隆さんは深い溜め息をついた。

「…私が、今までどんな思いで働いてきたと…」

「…義隆さんは、仕事のことばっかり…私も隆行も、どうでもいいんでしょう?」

「…本気で言ってるのか…?」

「…違うの?」

義隆さんは、また深い溜め息をついた。

「君が妊娠した時、君のご両親に約束した。君に金銭的な苦労をかけないこと、それが私のけじめだった…君は浪費家ではないけれど、お嬢さん育ちで特に倹約家というわけでもないから…これだけでやりくりしてくれとは言わず、生活費の追加を言われた時は必ず応じようと思ったし、実際そうして来た。バブルが弾けて仕事が激減した時は、会社に隠れて知り合いのバーでダブルワークをしたこともある。私なりに、君たちを守ってきたつもりだよ…」
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