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第22章 白河 桜子
「熱中症ですって?」

私は頷いて、

「妊娠したけど、流産したの…」

「…そう…」

お母さんは辛そうに俯く。

「…義隆さんの、子じゃないの…」

「⁉︎」

「…不倫したの…」

「義隆くんじゃなくて、桜子が?」

私はこくりと頷いた。

「…義隆さん…仕事が忙しくて、ウチにも帰って来ないし、もう何年もすれ違ってて…寂しくて…言い寄ってきた人につい流れちゃって…隆行も義隆さんも傷つけて、離婚して、その人のところに行ったら…冗談だろって振られて…独りになっちゃった…私…独りになっちゃったよ…」

お母さんはびっくりして言葉もなかったけど、私が泣き崩れたら、スツールから腰を上げて、ベッドに座って、ただ私を抱きしめてくれて。
私を抱く細い腕が、震えてて、耳元で、お母さんの嗚咽も聴こえて。

「…バカねあなた…何やってるの…!」

と言いながら、一緒に泣いてくれた。

ひとしきり泣いて落ち着いた私に、お母さんはごめんなさいね、と謝った。

「…あの時、私たちがもう少し寛大になれてたら…あなたが子供を連れていつでも帰って来られる状況を作ってあげられてたら、そんなこともなかったかもね…私も昔は、白河のお母様に叱られたり、何かあったら実家に帰って愚痴ばっかり言ってたもの…」
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