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第2章 高野 正一郎
「正一郎!」
「こんな女要らん」
「お前、祝言挙げといてそんな事…」
「家に帰されへんのやったら俺が家を出る!」
「正一郎、お前!」
「お父ちゃんの顔潰す気か⁉︎」
お袋が金切り声を出す。
親父も血の気が引いて真っ白い顔をしとる。
「親父の顔なんか知ったことか。俺の稼ぎと自分の見栄とどっちか選べ。」
「兄貴!」
俺は家を出た。
行くあてなんぞ無い。
神社の側、そのまま進むと磯が広がる、田んぼの畔。
目の前には田んぼしかない。
田に張るための用水路が川のように流れていた。
水の流れる音というのは、気持ちが落ち着く。
地べたに座り込み、ぼんやりその音を聞いた。
「…兄貴。」
「…何や」
「兄貴がどうしてもタエさんと添われへんのやったら、俺が貰うことになると思う。」
「何じゃそれ!俺は実家に帰せと言うたはずや。」
「高野の家に来た嫁や。祝言の翌日に返したり出来るワケないやろ。何があったか知らんけど、親父の立場も考えてやれ。」
「知ったことか」
「こんな女要らん」
「お前、祝言挙げといてそんな事…」
「家に帰されへんのやったら俺が家を出る!」
「正一郎、お前!」
「お父ちゃんの顔潰す気か⁉︎」
お袋が金切り声を出す。
親父も血の気が引いて真っ白い顔をしとる。
「親父の顔なんか知ったことか。俺の稼ぎと自分の見栄とどっちか選べ。」
「兄貴!」
俺は家を出た。
行くあてなんぞ無い。
神社の側、そのまま進むと磯が広がる、田んぼの畔。
目の前には田んぼしかない。
田に張るための用水路が川のように流れていた。
水の流れる音というのは、気持ちが落ち着く。
地べたに座り込み、ぼんやりその音を聞いた。
「…兄貴。」
「…何や」
「兄貴がどうしてもタエさんと添われへんのやったら、俺が貰うことになると思う。」
「何じゃそれ!俺は実家に帰せと言うたはずや。」
「高野の家に来た嫁や。祝言の翌日に返したり出来るワケないやろ。何があったか知らんけど、親父の立場も考えてやれ。」
「知ったことか」