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第2章 高野 正一郎
そうして祝言の日になった。

横におる娘は、ちんまりした色黒の女で。
顔は化粧しとったけど、手は真っ黒。
よう、日焼けしとる。
タエみたいな気取りくさって家から出ん女ではないんやろうな、と思った。

祝言の祝いの盃で酔うた俺は、とても初夜なんぞ出来る状態やのうて。
重い足取りで部屋に向かう。
部屋に入るとき、ついつい頭を下げて潜るのを忘れ、鴨居に頭が擦れた。

「痛ぇ…」

つぶやきながら向かいに座る。

吊られた蚊帳の外に、ちんまりと座った娘は、化粧も落としとって。
やっぱり顔も首も手と同じように真っ黒やった。

初めてまじまじと見た顔は、別嬪やないけど、不細工でもなかった。どっちかと言うと、目も鼻も丸っこい、愛嬌のある顔立ちやった。
菊乃という名前で、歳はまだ十七とか言うとった。
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