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第2章 高野 正一郎
格子窓から差し込む月明かりを頼りに、掴んだ手を見、立ち上がらせて腰も触った。
触ったら怒ってきたけど。しっかりと張りのある骨と肉付き。よう動いとる証や。
食いついてくる度胸もある。けど、男に触られるのに慣れとる風もない。
まだ、未通娘かも知らんな…と思いながら。

親父が家のために嫁を貰え、というなら。
こんな女でえぇ。惚れる必要はない。

ただ、嫁として、家の仕事をさして、子が出来りゃあ、親父とお袋は満足するんやろう。

それだけ確認し、俺は布団に寝転がった。

「…あの…」

所在無さげにぽつりと呟いた。
さっきの威勢はどこに行ったんや。
笑いそうになりながら、

「今日は酔うたからな。もう寝る。」

と言うたら、おずおずと蚊帳を開けて中を見とった。

「何や、入るなら早よ入れ。蚊が入るやろうが!」

どやしたら蚊帳の中には入ってきた。

そのまま、背を向けるように、端っこに転がった。所在無さげやのに、逃げるでも泣くでもない。やっぱり腹は座っとんのかな、と思いながら、吸い込まれるように眠った。
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