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第28章 萩原 義隆 ー 過去編 ー
後悔先に立たず。

解っているのに、なんでやってしまったんだろうな。
避妊具を使ったところで100%じゃない、とも聞く。
だけど、必ず着ける、と決めていれば、そのタイミングは今じゃなかったかもしれない。
案の定、彼女のご両親に報告したら、学生の分際で、と激怒され。
いい加減な気持ちじゃないのなら彼女と子供を養ってみろ、と放逐された。

彼女を護らなければ。
今までご両親に、大切に育てられてきた箱入り娘に傷をつけたからには、私が責任を持って護らなければならない、と決心した。
幸い景気の良い時代だったから、新卒の給料でも妻子を養うのはさほど大変なことでもなかった。ただ、仕事は忙しかったから、彼女の側で支えることはできず。妊娠中も、出産してからも、彼女や子供を顧みる余裕がなかった。
そしてその好景気はそう長くは続かず、バブルは崩壊、仕事は激減し、比例して収入も激減する。

仕事が減って早く帰れるようになったからと言って、彼女に寄り添えるか、と言ったら、そういうわけでもなかった。
本当はそうしてやれば良かったのかもしれない。だけどその頃には、毎月渡していた生活費をどうキープするか、に必死で。ボーナスの回数が減ったことはまだ言い訳できたとしても、毎月の生活費の減額は言い出せなかった。コレだけでやりくりしてくれ、なんて言えなかった。 それが、ちっぽけな私のプライドだった。
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