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第31章 吉田 理恵
圭吾くんが向かったのは、店内ではなくて、整備スペースというのかしら、大きなガレージのようなところ。
でもそこから事務所のようなトコロに入って行く。
え?ココって、関係者以外立入禁止的な感じじゃないの…?
という私の疑問を他所に、ガラス窓のついた扉を開けて、どうも、と挨拶した。
デスクやパソコンの他に、車のパーツなのか、私にはよく分からないものが沢山ある、雑多な室内。

「あ、いらっしゃい。」

休憩していたらしきスタッフさんが雑誌から顔を上げ、咥えていた煙草を灰皿で消した。

「すみません。ちょっと、また見せて貰いに来ました。もうすぐ一緒に住むので、やっぱ同居人の許可がないと…」

と、圭吾くんが向かった先にいたのは、小さなゲージの中で眠る、真っ黒の仔猫だった。

「…何でこんなトコに猫がいるの…?」

思わず口をついて出た素朴な疑問に、スタッフさんが苦笑する。

「一昨日点検に来た車の中に入ってて。」

「車に居たならその車の持ち主の猫ちゃんじゃないんですか?」

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