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第33章 市八
鷺の言う父親は、誰か他にいるのでは?
そう思えば、得心がいく。だからと言って今更八尋以外の男を父と呼べと言われても無理な相談だと思うのだが、一度芽生えた疑問は消えることはなかった。

風呂を終えて長屋に帰り、設えられた夕餉を食う。
衝立裏の寝床を覗くと、盛大に襖を蹴り、布団から転がり出て大の字になったまま眠る信太郎と、きぬに乳を遣りながら添い寝してしまったサヨの姿があった。

飯を食い終えた椀と箸を白湯でゆすぎ、湯を飲み干すと椀を伏せ、箸を渡すように置いた。

寝床に入る前に、乳に吸い付いたままのきぬの口を、そぅっと乳首から外して寝かす。
口を開いたまま、ぐっすりと眠る赤ん坊に、眦が下がる。
きぬはサヨによく似ている。

子供達に起きる気配がないことを確かめ、サヨの背中側に潜り込んで無理やり此方を向かせた。

ん⁉︎と声を出し、サヨが目を覚ました。

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