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第33章 市八

「市っちゃん…大好き。」
「俺もだ。」
子供を背に恋人同士のように抱き合う。
手代の頃、藪入りの度に茶屋で逢瀬を重ねた時のように。
思えばあれから十年経つ。
初めてサヨを抱いた後、鷺に呼び出され、サヨに手を出しただろうとバレた時は本当に肝が冷えた。鷺に隠し事は出来ないと思ったものだ。だが鷺は、怒っていたわけではなかった。
ただ、いい加減な気持ちで手を出したんじゃないんだな?と念を押され、一生サヨを大事にしてやってくれ、と頭を下げてきた。
それは、子を想う親の顔そのものだった。
きっと市八も、きぬが年頃に育って、いい加減な男に遊ばれたら腹がたつ筈だし、良縁を得て幸せになって欲しいと願うだろう。
だから、これは一生反故に出来ない男の約束なのだ。
「浮気は嫌だよ?」
そんな事を知ってか知らずか、サヨは甘えるように市八の胸を叩く。
「するかよ。」
「市っちゃん男前だから心配なのよ。」
「俺もだ。」
子供を背に恋人同士のように抱き合う。
手代の頃、藪入りの度に茶屋で逢瀬を重ねた時のように。
思えばあれから十年経つ。
初めてサヨを抱いた後、鷺に呼び出され、サヨに手を出しただろうとバレた時は本当に肝が冷えた。鷺に隠し事は出来ないと思ったものだ。だが鷺は、怒っていたわけではなかった。
ただ、いい加減な気持ちで手を出したんじゃないんだな?と念を押され、一生サヨを大事にしてやってくれ、と頭を下げてきた。
それは、子を想う親の顔そのものだった。
きっと市八も、きぬが年頃に育って、いい加減な男に遊ばれたら腹がたつ筈だし、良縁を得て幸せになって欲しいと願うだろう。
だから、これは一生反故に出来ない男の約束なのだ。
「浮気は嫌だよ?」
そんな事を知ってか知らずか、サヨは甘えるように市八の胸を叩く。
「するかよ。」
「市っちゃん男前だから心配なのよ。」

