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第33章 市八
「市八、晩飯は何が食べたい?」

「ん〜、何がある?」

「朝買った豆腐、水に漬けてあるから、炒り豆腐でもしてあげようか?」

「母ちゃんの炒り豆腐!うん!それがいい!」

「じゃあ、卵見て来なきゃね。」

サチが再び席を外す。

「さっきの陽炎の話だけどね。私がそのシロだと言ったら、お前は信じるか?」

「へ?」

「勿論芝居のとおりではないけれど。お前が生まれるずっと前、陽炎という組織は本当にあったんだ。」

「え…?」

「頭の市九郎を中心に、忍びの八尋、手裏剣使いの赤猫、そして参謀の鷺と兵衛。あとは、手下が何人もいたけどね。一つのヤマで動員するのは十人がとこ、だったな…」

「鷺と兵衛…って…え?鷺のおじさんと兵衛のおじさん…?」

八尋はコクリと頷いた。

「手裏剣使いの赤猫…赤…顔に傷…まさか、母ちゃんのことなのか…?」

八尋は再びコクリと頷く。

「だから鷺のおじさんは母ちゃんのこと猫ちゃんて呼んでたのか…サヨのおっかさんは…」

「あの人は堅気だよ。組織がバレてから鷺が知り合った人だ。多分、何も知らないだろう。言っても土台信じないだろうね。めくらの旦那が盗賊だっただなんて。」
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