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第33章 市八
湯屋で、他人の身体など見慣れている。
家族のはずなのに、八尋の身体を見るのは初めてだった。
ガリガリの骨と筋ばかりの、痩せ細った貧相な身体。股を隠していた手拭いを外すと、子供のようなモノしかついていない。湯屋でも、あまりに立派だと、おぉ、と目を奪われることはあるが、逆はない。大きさは人それぞれだし、勃っているわけでもない、垂れ下がったままのモノの大きさなど気にして見たことがない。
それにしても、小さいな、とは思った。だが違和感はある。
子供のモノは、竿よりタマが大きく、二段構えのようになる。大人になると竿も成長し、後ろに隠れるようにはなるが…

「…市八。よく見てご覧。私には子が出来ない。出来ようがないんだ。」

八尋は小さな竿を持ち上げ、下を見せた。

「…タマ…え?ない、のか…?」

「子供の頃に取られたからね。」

「何で?」

「言ったろ?私は人としての扱いを受けずに育った。私を使う奴らに必要のないものだったから、切られたのさ。」

「そんなこと…」

自身までキュッと縮まる思いで、思わず股間を手で庇う。

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