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第35章 新田 桜子
「まぁ、振袖は独身の間しか着ないもんだから…成人式の他に、って言えば、大学の卒業式か…結婚式に出席する時に着たりするくらいかしらね…」

「ほら、大して出番ないじゃん。結婚式なんていつあるか分からんしな。どうせレンタルだって数千円なんてレベルじゃないんだろうし、男モンのスーツ買うのと同じかそれ以上かかんだろ?だったらレンタルで十分だろ。その友達だってお姉さんが作るんだろ。姉妹で着るならレンタル2回、卒業式も考えて4回分より作った方が経済的、って理由とかじゃねぇの?ウチはお前1人なんだからそんなゼータクすんなっつの。」

誠大の正論に、満希がしょんぼりと項垂れた。

「満希はどんな着物がいいとかあるの?」

「桜子⁉︎」

私まで振袖の仕立てに乗り気だと思ったのか、誠治さんは少し引き攣ったような顔になる。

「綺麗なの!でも安っぽいのはヤダ。他のコが着てないようなのがいい!」

「おばあちゃんの家に私の振袖があるわよ。亡くなった私のおじいさんが作ってくれたんだけど。一度しか着てないのに勿体ないっておばあちゃんが嘆いてるわ。大事に取っておいてくれてると思うから今度見に行く?」
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