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第35章 新田 桜子
「おめでとうございます」

誠大もぺこりと頭を下げた。

「あけましておめでとうございます。本年ももどうぞ宜しくお願いします。」

誠治さんも頭を下げた。

「お母さんは?」

「お茶の準備じゃないかな。」

「あらそう。じゃ台所ね。誠治さん、お父さんとリビングで待ってて。私お母さんを手伝ってくるから。」

私は持ってきた焼き菓子の紙袋を目の高さまで上げ、アイコンタクトをする。私は実家に帰るだけだから手ぶらでもいいんだけど、誠治さんは毎回何かしがの手土産を持たないと気が済まないみたいで、今回も来る前に近所のケーキ屋さんの焼き菓子を買ってきた。

まぁ、それは私も同じで誠治さんの実家に行くときは大層なものでなくても何か持って行かなきゃ、ていう気がするから、コレはお互い様だろう。あくまで結婚相手の実家であって、自分の家ではない、このちょっとした気遣いっていうのは、何年経っても変わらない。それが百貨店の菓子折から、近所のケーキ屋さんのお菓子に変わったのが、距離感の変化、ってところかしら。

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