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第35章 新田 桜子
紅茶をのせたたお盆を持ってリビングに行くと、小さなポチ袋を持って満面の笑みの子供たちと恐縮する誠治さんの姿。これも毎度の光景。

「さ、お茶が入ったからお年玉は仕舞って?」

満希はポシェットに、誠大は上着のポケットにそれぞれポチ袋を仕舞い、私はティーカップとケーキを並べた。

ケーキを食べ終え、私は昔自分が使っていた二階の部屋にアルバムを取りに行った。

赤ちゃんの頃のものから、ズラリと並んだ重たいアルバム。
適当に抜いて中身を確認しては戻すことを繰り返した。
アルバムの中では最後の方、が成人式だ。
そのすぐ後に妊娠が判って、私は家を出ざるを得なくなったから…

アルバムはきちんと左から右へ並んでいて。
一番右端の一冊が大学時代のものだった。

シャネルタイプと言われたノーカラーの千鳥格子柄ジャケットに、黒いタイトミニのセットアップ、襟元はエルメスのスカーフ、耳にはシャネルの大きなイヤリング。

今じゃ考えられないくらいゴツい肩パッドが入ったダブルカラーのスーツにチェーンベルトを合わせちゃうあたり、もういかにもバブルな格好ばっかりだ。

目の覚めるような真っ赤なカシミヤのロングコート。それも笑っちゃうくらいビッグシルエット。
メイクも白塗りに真っ赤なルージュ、太い眉毛に巻き上げた前髪…
今見ると十分黒歴史と呼べるくらいのシロモノだった。
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