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第35章 新田 桜子
久し振りに振袖を見た。

地色は白から部分的にグリーン、(草色というらしい)を流したグラテーションの様な色合い。加賀友禅の特徴とも言える、全体に細かい花をたくさん散りばめたような華やかな柄。帯は金箔の七宝柄。これもおめでたい柄だそうだ。

「草履とバッグもお揃いで仕立てたけどね、ダメね、小物は傷んで使えそうにないわ。」

「そうなの?」

「草履は底が剥がれちゃってたし、バッグも生地と芯地が剥がれちゃってる。ミンクのショールはまだあるけど、今時してるコ見ないわよね。」

「確かに…」

和室の暖房を入れ、部屋が温まるまでの間に、満希の髪をコテで巻いてアップスタイルにする。髪飾りがないからクルクルにした。
なんだか楽しい。

「メイクもちょっとしようか?」

まだ中学生で肌も綺麗だからベースは軽く。お母さんの日焼け止めクリームを塗って軽くお粉を叩く程度で充分。
着物だから赤い口紅を指して、同じ口紅を少し手の甲に取り、指先でポンポンと目尻に乗せた。

「え、目に口紅塗るの?」

満希はびっくりしたようだけど、お母さんは笑った。

「和服のメイクはね、洋装のメイクとは違うから。女のコは恋をすると目の周りがほんのりピンクになって色っぽくなる、っていってね。着物でお洒落するときは赤系のアイメイクをしたりするのよ。」

「へぇ…」

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