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第35章 新田 桜子
口紅を指すのも慣れてないから緊張して固まってる満希が可愛い。

部屋が温まってきたところで満希の服を脱がす。
予めキャミソールの上に前あきのフリースを羽織らせてたから、後は襦袢を着せるだけ。

お母さんは過去の記憶を頼りに四苦八苦しながら着付けていく。
一度腰紐で縛っては、納得いかないようで細い満希の身体にタオルを巻いたりして太さを調整しながら、私も手で押さえたり足りないタオルを取りに走ったり、ああでもないこうでもないとワイワイしながら何とか着付けた。

「着物って…こんなに苦しいものなの…」

ずっと立ちっぱなしで、着せ替え人形状態だった満希は流石に疲れたのか、うんざりした調子で呟いた。

「本番はちゃんと美容院で着付けて貰えばいいわよ。慣れてる人がやればもっと手早いし、微調整もしてくれるから。それにコレはまだ桜子が着たまんまの状態だからね。満希ちゃんにはちょっと大きいもの。だけど満希ちゃんはまだコレから背が伸びるかも知れないし、もう少ししてから、高校を卒業する頃に一度合わせて必要があればお直ししましょう。」

お母さんは思い出の振袖が日の目を見られて嬉しそうだった。
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