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第35章 新田 桜子
「ありがとうございました。」

深々と頭を下げる誠治さんに、お父さんとお母さんが笑って手を振る。

「いや、こちらこそ楽しいお正月だったよ。6年後が楽しみだな!」

「本当に。桜子の振袖がもう一度日の目を見られるなんて本当に嬉しいわ。亡くなった私の父が仕立ててくれた思い出の品なんです。」

「いや、本当に素晴らしい着物ですよね。着物の事なんか全然門外漢なんですけど、それでも綺麗だと思いました!」

「手描きの作家さんがもう減ってるし、今じゃ手に入らないくらい本当にいいものなのよ。かと言って一度袖を通したらもうただの古着扱いで、手放すのも馬鹿馬鹿しいくらいの値段になっちゃうの。結局仕舞い込んだまんま。桜子に娘が出来たらいいなってずっと思ってたの。だから嬉しいわ!」

「こちらこそ、成人式に振袖仕立ててやるなんて到底無理な話なんで、助かりました…」

誠治さんのコレは本心なんだろうな…

「今時はみんなレンタルが主流なんでしょ。何百万も掛けて着物仕立てたって着る頻度考えたら、ねぇ。」

「着物ってそんなすんの⁉︎」

誠大が目を剥いた。

「ピンキリだけどね。桜子のアレは今なら車ぐらい買えるんじゃない?」

私も総額は聞いてないけど、多分そのくらいだろうとは思ってたから、肩を竦めた。誠治さんは目の下を引き攣らせながら、なんとか笑おうとしてたけど、正直笑顔には程遠かった。


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