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第36章 間宮 涼香
龍沢さんは座るところを探して、道沿いのバス停のベンチに座る。
公園とかはちょっと遠い。

夏の、身体にまとわりつくようなじっとりとした空気は、決して快適とは言えなかった。

少し休んで、暑さに耐えかねたのか、

「もうそろそろタクシー拾っていいかな?」

と聞いてくる。私はふるふるとかぶりを振った。

龍沢さんはため息をついて、浮かしかけた腰を再びベンチに落ち着ける。
でも、遠くからバスが走って来るのが見えて。勿論バスに乗るつもりで座ってる訳ではないから

「ダメだ、バス来ちゃった。場所変えよう。…外はダメだな。蚊に喰われる…」

確かに、お酒を呑んで体温が上がった私たちは、格好の餌食だった…

「あ、痒い!」

ノースリーブのワンピースから剥き出しの腕を刺されて、ポリポリ掻く。掻くと余計に痒みが出るんだけど一度掻いちゃうともう止められない。

「掻くと跡残るよ。薬つけた方が…」

「持ってないもの…」

「…ウチでつける?こっからなら直ぐだから…」

「…うん…」

龍沢さんは私を腕に掴まらせたまま、自分のアパートに足を向けた。

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