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第38章 桜
その昔…まだ桜が突き出した(遊女として客を取り出した)ばかりの頃。
桜は独り暗い布団部屋にいた。
そこで見世の者らに折檻を受けたのだ。
見世の者らは折檻を終えると部屋から出て行った。
戸が閉まってしまえば灯りひとつない暗い部屋。殴られた傷がうずき、口の中に血の味がした。
「…大丈夫か?」
「ひっ!」
暗闇の中、いきなり男の声がして、桜は息を呑んだ。
桜の傷を案ずるような声は、聞き覚えのない男の声だった。
「誰じゃ!おまはん、見世のモンじゃなかろ!」
「…あぁ…うん…まぁ…」
「何でこねぇなとこに居る⁉︎ 」
「…やぁ…何つーか…ま、野暮用でな…」
「はぁん、さては敵娼(あいかた)と喧嘩でもして逃げてきんじゃな?」
「ま、そんなトコだ。」
ヘヘッと笑った男は桜の側に腰を落ち着けた。
「お前は何やらかして折檻なんかされてたんだ?」
「いけ好かん客人の座敷に上がるのが嫌じゃと駄々をこねたら、お職でもないのに思いあがるなと言われんした」
「成る程なぁ…それで折檻か…ま、女郎は客を選べねぇっていうからなぁ…」
「水桶を跨ぐかどっちか選べと言われんして…」
「水桶?なんだそりゃ…」
「…衣の裾をたくして、水を張った桶を跨がせられんす…したら股が水に映るじゃろ」
「…まぁ、なぁ…で?それか折檻か選べと言われて折檻されたのか。」
「だって!見世の若い衆がニヤニヤしながら見とるのに…嫌でありんす。」
桜は独り暗い布団部屋にいた。
そこで見世の者らに折檻を受けたのだ。
見世の者らは折檻を終えると部屋から出て行った。
戸が閉まってしまえば灯りひとつない暗い部屋。殴られた傷がうずき、口の中に血の味がした。
「…大丈夫か?」
「ひっ!」
暗闇の中、いきなり男の声がして、桜は息を呑んだ。
桜の傷を案ずるような声は、聞き覚えのない男の声だった。
「誰じゃ!おまはん、見世のモンじゃなかろ!」
「…あぁ…うん…まぁ…」
「何でこねぇなとこに居る⁉︎ 」
「…やぁ…何つーか…ま、野暮用でな…」
「はぁん、さては敵娼(あいかた)と喧嘩でもして逃げてきんじゃな?」
「ま、そんなトコだ。」
ヘヘッと笑った男は桜の側に腰を落ち着けた。
「お前は何やらかして折檻なんかされてたんだ?」
「いけ好かん客人の座敷に上がるのが嫌じゃと駄々をこねたら、お職でもないのに思いあがるなと言われんした」
「成る程なぁ…それで折檻か…ま、女郎は客を選べねぇっていうからなぁ…」
「水桶を跨ぐかどっちか選べと言われんして…」
「水桶?なんだそりゃ…」
「…衣の裾をたくして、水を張った桶を跨がせられんす…したら股が水に映るじゃろ」
「…まぁ、なぁ…で?それか折檻か選べと言われて折檻されたのか。」
「だって!見世の若い衆がニヤニヤしながら見とるのに…嫌でありんす。」