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第38章 桜
「…ぼぼ(女性器)くらい見せたって減るモンでもなかろうによ。殴られる方が痛えだろ。」

「けんど…」

「オンナの矜恃か?お前女郎だろうが。どうせ持つなら玄人の矜恃にしろよ。お前の身体は売りモンだろうが。見られて困るトコなんか作ってどうすんだ。隅までしっかと磨いてどうぞと見せてやりゃいいじゃねぇか。殴られンのは、それが効かねぇときだけにしとけ。」

そ、っと肩に腕を回し、殴られた痕を撫でてくれる。

「大体よ、仕置きってなそればっかりは堪忍しておくんなましと泣いて拒むから仕置きになんだよ。涼しい顔でこなされちゃあ仕置きにならねぇ。だからよ、嫌だと思うことほど屁でもねぇってツラでやってみろ。二度と言われねぇよ。女郎はオトコ手玉にとってナンボだろ?芝居のひとつくらい打ってみやがれ。」

男の言葉にそれもそうだ、と得心する。
どちらか選べと迫った男衆の、ニヤニヤと下卑た笑みの中には、見ること叶わぬ妓の身体を見てやろうという助平心の他に、やれるものやらやってみろ、という侮りがあった。
堅気の女ならば拒むが道理。だが己は女郎だ。
商売道具ひとつ見せられんで何としょう。

桜はニヤリと笑った。

「わかった。次はそうする。」

「いい答えだ。」

男も笑った。
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