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第38章 桜

その時、ぐぅ…と桜の腹が鳴る。
「なんだ、腹減ってんのか?」
「今日は飯抜きじゃと言われんした…こんなじゃ座敷にゃ上がれねぇし…台の物の残りにもありつけんせん…」
「…食えよ」
ごそごそと音がして、男は懐から何かを取り出した。
「食おうと思って持ってたけど…懐に入れてたから温まっちまったな…」
「何…?」
「握り飯」
思わずぷっ、と噴き出す。客人ならば座敷で膳を出させることもできるし、外には茶店も食い物屋もたんとある。握り飯持って廓に来る客など聞いたことがなかった。
噴き出して笑いはしたものの、唇に押しつけられた米の感触に、そのままぱくりと食い付いた。腹が減っていたから、ただの握り飯なのにやたらと美味い。
「美味し…」
握り飯を一個平らげた後、男はそのまま肩を抱いてきた。
暗闇の中、男の顔は全く見えなかったが、声も、腕の感触も、嫌なものではなく。
そのままどちらからともなく、唇を重ねる。
「お前、名は?」
「桜…」
「桜だな。俺は市九郎だ。また来るぜ。」
唇に余韻を残し、男はそろりと布団部屋から出て行った。
また来ると言ったところで、喧嘩するような敵娼が居るなら桜の客にはなれんだろうに…溜息をつき、桜は布団に身体を預けた。
「なんだ、腹減ってんのか?」
「今日は飯抜きじゃと言われんした…こんなじゃ座敷にゃ上がれねぇし…台の物の残りにもありつけんせん…」
「…食えよ」
ごそごそと音がして、男は懐から何かを取り出した。
「食おうと思って持ってたけど…懐に入れてたから温まっちまったな…」
「何…?」
「握り飯」
思わずぷっ、と噴き出す。客人ならば座敷で膳を出させることもできるし、外には茶店も食い物屋もたんとある。握り飯持って廓に来る客など聞いたことがなかった。
噴き出して笑いはしたものの、唇に押しつけられた米の感触に、そのままぱくりと食い付いた。腹が減っていたから、ただの握り飯なのにやたらと美味い。
「美味し…」
握り飯を一個平らげた後、男はそのまま肩を抱いてきた。
暗闇の中、男の顔は全く見えなかったが、声も、腕の感触も、嫌なものではなく。
そのままどちらからともなく、唇を重ねる。
「お前、名は?」
「桜…」
「桜だな。俺は市九郎だ。また来るぜ。」
唇に余韻を残し、男はそろりと布団部屋から出て行った。
また来ると言ったところで、喧嘩するような敵娼が居るなら桜の客にはなれんだろうに…溜息をつき、桜は布団に身体を預けた。

