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第38章 桜
市九郎が通ってくるのは五日か六日に一度、長くとも十日空くことはなく。
桜は市九郎の登楼を心待ちにしていた。

市九郎は時折、握り飯や茹でた卵を持ってきた。

「今腹は空いておりんせん」

嫌味かとむくれて拒むと、

「要らねぇなら誰か他のヤツにやれよ。ココにゃあン時のお前みてぇに食いっぱぐれたヤツがいるんだろうからよ」

と笑う。
普通、客が女郎に携えてくるものと言えば、櫛や笄(こうがい…かんざしのようなもの)、消えるものなら菓子が殆ど。
それも並ばねば買えぬと評判の菓子や、老舗の高い菓子をわざわざ携えて来るものが多かった。
だが、誰に渡しても喜ばれるようなそれらの貢物は、返して言えばそれさえ渡せば満足するのだろうと言われているようでもあり。
ともすれば莫迦にするなと投げられるような握り飯や卵には、煌びやかな女郎方への媚び諂いでなく、苦界に沈み、食うや食わずの暮らしを送る下々の者らに向けた優しさが感じられた。

そして、殆どは禿に下げ渡されるが、偶に口にすると、とても優しい味がした。

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