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第38章 桜
やおら桜に向き直ると、着物を脱ぎ捨て桜を組み敷く。
 
が、いつもと何かが違う。 
あの余裕がない。
何か考え事をしたままなのか、ただ衝動をぶつけるかのような乱暴な抱き方。それでも、慣れ親しんだ身体を桜が拒むことはない。
拒みはしないが…一方的に終えると、市九郎はごろりと布団に転がった。
市九郎に抱かれて、気を遣らなかったのは初めてだった。

「苦しそうなお顔」

市九郎が心此処に在らずなのは判っている。それでも、今此処にいるのだと、そばに居るのは己だと気付いて欲しい。
桜は指で市九郎の頰の傷をなぞる。無精髭がチクチクと指を刺した。

長い沈黙の後、ようやっと口を開いた市九郎の言葉は…女郎が孕まない為に何をしているのか、だった…

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