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第5章 井上 翔太
神戸に来た。
通勤圏内ではあるけど、どうせ大阪も地元じゃないし、だったら近い方がいいや、と、思って会社の近くに引っ越した。
会社まで自転車で10分のワンルーム。

俺の紹介の為、臨時の朝礼が開かれ。
自己紹介の後、みんなに挨拶して回る。
本社は自社屋だけど、神戸は営業所だからビルのテナント。
人数も20人程度しかいない。
その7割が営業で、後の3割が事務員。その辺の比率は本社と変わらない。でも総務職はいなくて、事務所の小口現金の出納とか、本社総務部との橋渡し的なことをベテランの事務さんが兼任してるって感じ。

神戸と大阪の距離だから、見知った顔も居たけど、そもそも販路が違うから、よく知ってるわけでもなかった。
挨拶の後。

「井上くん。私は営業の小鳥遊。これから2ヶ月、営業先の引き継ぎ等々、私が同行します。仲良くやりましょ。ヨロシク。」

1人の女性に声をかけられた。

彼女、小鳥遊 真紀さん。

神戸のトップセラーは女性だと聞いてはいたけど、販路が違うから、本社の会議とかでもあんまり顔を合わすことがなくて。社内報とかで写真を見たことがあるくらいだった。

彼女は小柄で、くりくりとよく動く目と、人懐こい笑顔が印象的な、女の子に見えた。30はとうに超えてるはずだけど、辻本さんより幼く見える。バリバリの、キャリアウーマンには到底見えなかった。
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