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第5章 井上 翔太
「ココア、置いときますから。温かいもの飲むと、落ち着きますよ。できれば冷めないうちにどうぞ。」
商談スペースの向かいの椅子に腰掛け、コーヒーをすする。
この空間を照らすのは、非常灯と、降ろしただけで閉じられていないブラインドの隙間から入る夜景の明かりだけ。
「… ココア、冷めちゃいますよ…」
何と声をかけたものかわからず、それしか言えなかった。
それまでイヤイヤの一点張りだった小鳥遊さんがコクン、とうなずいた。
ハンカチ、渡した方がいいんだろうけど、手拭いてビミョーに湿ったのしか持ってないし。
商談スペースには何もない。
さて、どうしたものか。
コーヒーを飲む以外することがない。
沈黙が重い。
でもここまできたらもう引き返せない。
「俺に関係ないことなのはわかってます。でも、気になるんです。俺でよければ、話聞きますよ?」
小鳥遊さんは手で顔を覆ったまま、ふー、ふー、と大きく息をして、なんとか落ち着こうとしているようだった。
そしてポケットからハンカチを出し、涙を抑える。
よかった、ハンカ チ持ってて。
俯いたまま、ココアの紙コップを手に取り、一口飲んだ。
「…おいし。」
真っ赤に泣きはらした目で、力なく微笑む。
商談スペースの向かいの椅子に腰掛け、コーヒーをすする。
この空間を照らすのは、非常灯と、降ろしただけで閉じられていないブラインドの隙間から入る夜景の明かりだけ。
「… ココア、冷めちゃいますよ…」
何と声をかけたものかわからず、それしか言えなかった。
それまでイヤイヤの一点張りだった小鳥遊さんがコクン、とうなずいた。
ハンカチ、渡した方がいいんだろうけど、手拭いてビミョーに湿ったのしか持ってないし。
商談スペースには何もない。
さて、どうしたものか。
コーヒーを飲む以外することがない。
沈黙が重い。
でもここまできたらもう引き返せない。
「俺に関係ないことなのはわかってます。でも、気になるんです。俺でよければ、話聞きますよ?」
小鳥遊さんは手で顔を覆ったまま、ふー、ふー、と大きく息をして、なんとか落ち着こうとしているようだった。
そしてポケットからハンカチを出し、涙を抑える。
よかった、ハンカ チ持ってて。
俯いたまま、ココアの紙コップを手に取り、一口飲んだ。
「…おいし。」
真っ赤に泣きはらした目で、力なく微笑む。