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第5章 井上 翔太
それに、不倫なんてへヴィーな告白、会社で聞く勇気は、俺にはなかった。

「小鳥遊さん、あの、とりあえず、ここ、出ませんか。もうすぐ巡回も来るし。警備員に見つかったらややこしそうだし。」

小鳥遊さんは無言のまま、それでも俺の意図するところは汲んでくれたんだろう。
小さく頷き、のろのろと重い腰を上げた。

会社を出たところで、行くアテなんかない。

神戸はあんまり来なかったし、こっち来てから休みの間もそんなウロウロしてないから、土地勘もないし、経験もないからこんなときドコに行くのがベストなのかもわからない。

ただ、落ち着いて話を聞けるところを必死で考えた。

座って話ができるとこ…と言っても公園じゃ寒すぎる。

素面で聞ききる自信がないから、個人的にはアルコールを摂取してから聞きたい話ではあるけれども。

バー、ってものなんか違う気がした。それに、今日なんてどこ行ったって浮かれたカップルでいっぱいだ。

かといって、ファミレスや居酒屋はもっと違う。
もっと、静かな場所がいい。

できれば、個室で。今日みたいな日は、どこで、誰に会うかわかったもんじゃない。泣いてる姿なんか、きっと見られたくないだろうし、な。

考えあぐねて徘徊しているうち、クシュ、と小鳥遊さんが小さなくしゃみをした。

寒いよな。
早く、どこ行くか決めないと。
風邪をひく。
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