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第5章 井上 翔太
「えーっと。話してくれますか?」

おもむろに切り出した俺に、小鳥遊さんは微笑んで頷いた。
もうだいぶ落ち着いたみたいだ。

「不倫やった、って言うたけど、正確には、不倫やったことがわかったのは、ついこないだのこと。」

「え?そうなんですか?」

小鳥遊さんはウン、と頷き、

「付き合って、1年くらいになるんやけど。私にはバツイチや、っていうててん。離婚の理由とかは聞いたような聞かんような、まぁ知り合う前のことをアレコレ掘り返すのも悪いかなぁと思って、あんまり追求せんかったのね。」

なるほど。
と、俺はウンウンと頷いた。

「別れた奥さんに家も空け渡してて、そのローンと、養育費で、毎月カツカツやって、言われて。デート代とかはほぼ私もちやった。
それはね。別にええねん。
私は男に驕って貰って当たり前とは思ってないし。
出せる方が出したらええやん、って考えてるから、別にええねんけど。
こないだの日曜、娘さんの、誕生日で、元嫁と娘に会うから、休みやけど会われへん、って言われて。別に毎週末必ず一緒に過ごしてたワケでもないし、全然気にしてなかってん。
納得して会わへんかったんやけど。
昼間、ふらっと1人で出かけて、美容院と、ネイルサロン行った、帰りに、偶然見かけてしまってん。
彼と、娘と。奥さん…」

そこまで話して、小鳥遊さんは自分の携帯を出した。
まさか、隠し撮り?と、ひとり焦る俺をよそに、小鳥遊さんが出した写真には。

5歳くらいの、女の子を真ん中に、右手に男性、左手に女性で並んで並木道を歩く、ごく幸せそうな、家族の肖像だった。
写真はすごく平凡なものなんだけど、なんだろう、小鳥遊さんの話の後だからなのか、違和感があった。

それが、なんなのかわからずにいる俺に、小鳥遊さんは話を続ける。
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