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うつむきピーターパン
第1章 誘惑

土曜の昼下がりの大阪駅前は、薄手の服に身を包んだ人で賑わいかえっている。
人だかりの中から黄色いワンピースに身を包んだ美咲がゆったりと姿を現した。
「先輩待たしちゃってすみません。まだこの辺の土地勘なくて。」
落ち着いているが、不思議とよく通る声だと良彦は思った。
美咲と二人で休日を過ごすのはこれで3回目だった。
ラケットを選びに行ってから何かと美咲は良彦のことを誘った。
真希に対して申し訳ないという気持ちはあったが、美咲はサークルの後輩で、何もいけないことはしていないと自分に言い聞かせていた。
流行りの映画を見ている最中何度も美咲の横顔を盗み見た。
端正な顔立ちは確かに男の目を引くに十分なものだと思った。
何かおいしいものでも食べさせてあげたいと思い何度か足を運んだことがあるイタリアンの店の扉をくぐった。
土曜だったが店内は意外と静かで、ローマの聖堂をモチーフにした薄暗い店内の雰囲気を美咲は気に入ったようだった。
向かい合って座ると赤い口紅がそこだけくっきりと浮かんで見えた。

