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***堕散る(おちる)***
第3章 step3初めの一歩

男の指が口内に入り、頬の内側や舌を押し上げ探る。
男と視線は合わない、その目はアタシの口内に向けられているから、

「ピアスや指輪の小物をね、口の中に隠してる奴もいるんだよね。」


そうなんだ。
思考も働かない。

ビィーッ…ビィーッ…ビィーッ…

長机に置かれたワタシの携帯が凄い音をたてる。

あっ、バイブの間隔で解る彼氏のメールだ。

「おっ電話、出る?
って、今喋れないか、ハハっ」

彼氏のメールはテロップに流れるように設定してある。

「【リュウよりメールです】だって、代わりに読んであげるね。彼氏だろ?」


イヤと言いたいけど噛むなと言われたアタシは
「あ゛っ」と濁った音を放つ。


「【今日はゴメンな。まだまだダチに付き合わされそうだ。また連絡する。】だってよ。
ルリちゃん可愛いのに、ほったらかしでダチとったの?馬鹿だねリュウ、ルリ可哀想。
まさかそれで万引き?」

男は指でアタシの舌を捏ねながら言う。

ダチじゃなくて女だし、そしてたぶんワタシの方が元々彼女ではなかったんだ。
こらえていた涙が今更流れる。

それを男に気づかれるのは嫌だった。
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