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***堕散る(おちる)***
第33章 step33 二十七段目 B3階 犬になって
太ももに白濁が伝っていることは全く気にならないようだった。
「いただきます。」
この一言を聞くのを本当に心待ちにしている。
カバーをとって、
「よし、いいぞ。」
言うや否や皿に顔を着けた。
最初は、食欲が無くなって食べさせるのに苦労することを懸念していた。
しかし、一度もひもじい思いはさせていないのに、
食に対する執念は目を見張るものがあった。
とにかくよく食べる。
おかげで細身だった体が丸みを帯びて魅力的になった。
午後は絵本を見せてのんびりと過ごす。
結局、ユキが意志を表現できる間にはお気に入りの本が決まらなかったので、毎日適当に選んで見せる。
午前中に包帯を外してから、もう包帯で咎めるのはやめた。
でも咎めていた時と同じように、丸めて内側にある第一関節を肉球のように使い、本の端に引っ掛けて捲る。
建造物や人が描いた物には興味を示さず、動物や花、自然の風景の写真を見ている。
多分、人間のすることに興味が無くなったのだと解釈している。
仕事をしながら、すぐ脇で本を見ているユキを眺めていた。