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***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
「ああ、一つだけ教えてやる。『はい』は『ワン』、『いいえ』は『ワンワン』、『sexしたい』は3回鳴く。これが彼女の意思表示だ。
他の言葉はない、そして難しい言葉や長い会話は理解できないと思うな。」
ルリは右京が説明する間、不安気に右京と俺を見比べていた。
「さあ、元の飼い主のところに帰るんだな。」
こう言って俺は最後の暗示を掛ける。ユキは元々飼われていた犬だったのだと…
そして『ユキ』の名で暗示を解かなければ洗脳は封印どころか凍結する。
一生犬のまま暮らすのだ。
「ルリ、おいで。家に一緒に帰ろう。」
俺はルリが怯えないようにしゃがんで身を低くして腕を広げる。
ルリはしばらく右京を見上げていたが、
「さよなら…」
ウウ…ワン…
右京に別れの言葉を告げられて、右京に返事をした後、俺を見た。
「帰っておいで…」
腕を広げたまま辛抱強く待つと四つん這いでやって来た。
「ルリ…」
「ワン…ぅぅ…ハゥゥ……ハゥトぉ…」
ようやく俺の名を呼び、腕の中に飛び込んできた。
「お帰り…」
ルリの手を握り立たせようとした。
「立たせない方がいい。」
右京が言った。
「何故だ?」