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***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
珈琲豆を挽き、サイフォンで珈琲を淹れる。
ガリガリと挽く音には少し驚いていたが、
俺の好きな音をソファーに座って一緒に聞いた。
ソファーに座るとついてきて上り、うつ伏せに踞り手と頭を俺の太ももに乗せる。
右京がいつもそうやっていたのかもしれない。
歯痒いが堪えてルリの頭から背中を撫でる。
元々遠慮がちだったルリならしないことだ。
そういった恥じらいや遠慮は仕事の上では邪魔になる。
だから、右京にリクエストしたのだが、
俺が求めていたものではない。
人形になった女にしてもそうだ。あれで依頼主は満足したのだろうか。
右京はいつもそうやってひねくれて依頼を達成させているのではないだろうか。
考え事をしてるうちに珈琲が入る。
マグカップに入れて持ってきた。
「ルリ、俺が持っているからコップで飲んでごらん。」
近づけると口をつけるのでゆっくり傾ける。
ビクッ…
熱かったのか驚いて離れブルブル震えたが、やはり喋らなかった。
普通なら『熱い』とか反射的に言葉が出るはずだ。
演技でないのはわかったが、どうしたらこんな短期間で言葉が話せなくなるのだろうか…