この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント
ルリの手を引いて、玄関を出る。
ぴよちゃんは悪いがお留守番だ。
「ぴっ…いっ…きます。」
手足に比べると言葉の治りは遅かった。
真似て喋ることはしても、単語を言い切ることすら出来ない。
「さあ、行こう。」
一度家に入ったら、服を着るのも面倒で出たがらなかった俺が、ルリに外の空気を吸わせたくて散歩に出た。
「すぐそこの公園だけどね。」
ルリが外に出ると怯えるかと思ったが、そんなことはなく楽しそうだった。
「ブランコに乗るよ。」
「うん…」
ルリを座らせ押してやる。
「はうと、できぅよ。」
ルリは笑って言い、自分で漕ぎ出した。
漕ぐ力は弱いものの一人で漕いでいた。
「はうと…ブ…、好き?」
「ああ、好きだよ。ずっと漕げなかったから、漕げるようになって嬉しい。」
「はうと…漕げな…ったの?」
「そう、少し前まではね。」
ルリに教えてもらったとは言わなかった。
言葉と同様、記憶の方も欠けたままで治りは遅かった。
手足が使えるようになると、ルリは料理をしたいと言い出し、そういう記憶は損なってなかったようで、レシピも見ずに色々作り始めたのに…