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***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント
でも、問い詰めたり責めたりせずに、俺も初めて話すかのように言った。
ルリが新しい生活をどう思っているのかも聞かない。
下手に傷口に触れると壊れてしまうかもしれないと考えていた。
「はうと…ブ…た、しぃね。」
「ああ、本当に、楽しいな。このフワッとする感じ…」
「うん…」
俺はルリを人に会わせることを決めた。
例えば、記憶は戻らないにしても、言葉だけは取り戻して欲しいから…
「ルリ、今晩一緒に出掛けるよ、ルリに会わせたい人がいる。」
「うん…っかったょ。」
俺がビーサンを投げるのを見てルリは笑い、真似をした。
片足で取りにいき、ルリの分も取ってくる。
飛ばしたくせに片足で立てないのに戸惑うルリの足元にサンダルを置く。
「シンデぇあみたい。」
「ん?それ何?」
「おはな、し…」
「寝るとき聞かせて?」
「う…ん…」
ルリは喋れないのに…と、困った表情で返事した。
「ルリ、出掛けるよ。」
また、手を繋いで玄関を出る。相手には早い時間に仕事場で会う旨告げてある。
事情や理由は全く話していない。それを見てもらうのが目的だから…
勘のいいアイツにそこから見てもらう。