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***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント

恒(つね)に変わらないって名乗り近づいてきた男。
名前通りの男だった。
そして本当は名無しの男…


こっちがどれだけ近づいても、身を焦がす想いでいても、私達の距離は恒に変わることはなかった。

「恒(ワタル)…
いえ、オーナーの愛に乾杯。」

私は煙草に火をつけ、グラスとボトルで1人乾杯した。

「ふふっ、二人ともお互いを愛しあっているのに気づかない。すぐそこで擦れ違ってる、あともう一歩なのにね。」


グラスを一気に煽る。

「ふふっ…意地悪じゃないからね、ルリちゃん。
愛は二人で育むもの…
その一番のスタートは本人たちで切るものよ。

自分たちで見つけて…

それが全ての鍵。」



***************************

「ルリ、大丈夫か?
待たせたね。行こうか。」

「はうと…エミさんは?」

「準備が忙しいからって追い出されたよ。行こう、他のスタッフも出勤してくる時間だから…」

「はぃ…」

俺たちは知らなかった。

酒倉庫兼隠れオーナー控え室に戻ったエミが、泣きじゃくって酒を煽っているなんて…

締められた扉をノックすることなく、店を後にした。


「はうと…エミさんと…何を…話してたの?」
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