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***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント
恒(つね)に変わらないって名乗り近づいてきた男。
名前通りの男だった。
そして本当は名無しの男…
こっちがどれだけ近づいても、身を焦がす想いでいても、私達の距離は恒に変わることはなかった。
「恒(ワタル)…
いえ、オーナーの愛に乾杯。」
私は煙草に火をつけ、グラスとボトルで1人乾杯した。
「ふふっ、二人ともお互いを愛しあっているのに気づかない。すぐそこで擦れ違ってる、あともう一歩なのにね。」
グラスを一気に煽る。
「ふふっ…意地悪じゃないからね、ルリちゃん。
愛は二人で育むもの…
その一番のスタートは本人たちで切るものよ。
自分たちで見つけて…
それが全ての鍵。」
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「ルリ、大丈夫か?
待たせたね。行こうか。」
「はうと…エミさんは?」
「準備が忙しいからって追い出されたよ。行こう、他のスタッフも出勤してくる時間だから…」
「はぃ…」
俺たちは知らなかった。
酒倉庫兼隠れオーナー控え室に戻ったエミが、泣きじゃくって酒を煽っているなんて…
締められた扉をノックすることなく、店を後にした。
「はうと…エミさんと…何を…話してたの?」