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***堕散る(おちる)***
第36章 step36 三十段目 地上階1F
「何がそんなに可笑しいんですか?」
「いや、1階まで穴が繋がってたら、1階の住民は服が詰まってて入れられないだろうなって…ックク…それに業者もどこの家のかわからないだろう…」
「えっ…じゃあ…この穴は、ハルト…専用なんですね。」
「ルリの穴は俺専用だよ?」
ルリは怒った膨れっ面のまま、照れて顔を赤くした。
「ん…」
「それに俺専用だったら…」
「1階は、穴だらけになっちゃいますね。」
「曲がってるから暗く見えるだけで玄関脇に繋がってるの。業者が各家庭に回収に来てるんだよ。」
「じゃあ…ハルトたちが楽なだけで、業者の人が大変なんですね。」
「そういうこと。さあ、冷めないうちにご飯にしよう。」
ルリの手を引いてリビングに戻った。
やはり、全く記憶はないし、こんなことが記憶の鍵になるはずもなかった。
でも、言葉と一緒に封じられた感情が解放されて、ルリの表情は豊かになった。
「「いただきます。」」
今朝は和食だ。魚に卵焼きに味噌汁にお浸し。
俺にとっては変わらないルリの味。
昨日までも一緒にルリが作っていたが、ルリが考えて一人で作ったと思うと格段に美味く感じた。