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***堕散る(おちる)***
第36章 step36 三十段目 地上階1F
「てか、どっちの話も知らないから、今晩シンデレラの話を聞かせてよ。」
「は…ぃ。」
でも、シンデレラの話をしたら、ハルトにサンダルを履かせてもらって思ったことがバレてしまう。
少し恥ずかしかった。
でもエミさんが言うように思ったことを伝えていかなきゃならないんだ。
「ごちそうさま。」
「ハルト、ワタシ、珈琲淹れてみたいです。」
「ああ、いいよ。教えてあげる。そしたら毎日豆を挽いてくれるだろうから…」
「えっ…」
「まぁいいか…」
ハルトは何だかニヤニヤしてばかりだ。
でも、いつも辛そうな、悲痛な表情が多かったから、今の方がいい。
「これが豆を挽くミルって機械だ。」
スプーンの分量を説明し、操作していく。
ルリは物珍し気に覗いていた。
挽いた豆をサイフォンに移して珈琲を淹れる。
コポッ…コポッ…
「この音を聞くと何故か落ち着きますよね。」
「ああ、どっかでこの音を聞いたことないか?」
「いえ…」
「母親の腹ン中にいたときの音、何も知らなかった時の、幸せだった時の音だ。」
「ハルトは何も知らなかった時が幸せだと思いますか?」
「それはわかんないな。今が酷けりゃそう思うのかな…」