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***堕散る(おちる)***
第36章 step36 三十段目 地上階1F
「辛い時は、逃げたくなるのかも、しれないですけど…
幸せだったことまで、忘れてしまってるのかと思うと、寂しいです。」
「ごめんな、ルリ。」
「何でハルトが謝るんですか?」
「大事なものを、大事にしなかったから…」
「ハルト…ハルトがワタシを救ってくれて、ワタシは感謝してます。だから、謝らないで…」
俺は、ルリを抱き締めた。
「もう絶対離さないから…」
「は…ぃ、ワタシも…ずっと、ハルトと一緒にいます。」
ルリからもう一度、『一緒にいる。』と言われた。
何度でも、やり直す。
例え、今の記憶すら残らなくなっても…
抱き締める手に思わず力が入った。
コポッ…コポッ…
大好きな音が、サイフォンとルリの心臓から聞こえた。
ルリは珈琲を飲みたい気分だと言って、ミルクと砂糖のたっぷり入ったそれを飲んだ。
焦ってはいけない。
俺はまた鍵を探す。ルリの記憶の鍵を…
1日のんびりと過ごし、トランプをしたり花札をした。
ルリのルリらしさ…
ルリの記憶の鍵になる重要なもの…
明日は事務所に連れていってみようと考えた。