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***堕散る(おちる)***
第37章 step37 三十一段目 地上階2F
「ハルト、生きた小魚って何に使うつもりだったんですか?」
「茶碗蒸し…」
「生きたまま蒸しちゃうんですか?ちょっと可哀想。
でも、茶碗蒸しならこれで十分ですよ。」
ルリは、やっぱり覚えていない。
中央に寄って蒸された稚魚…
その時に、『知らないまま蒸された方がいい。』と言ったことも…
もう一度同じシチュエーションを見たら、約束通り一気に蒸された自分のことを思い出すかもしれないと考えたのだが…
焦ってはいけない。ルリの記憶の鍵探し…
こうして俺達はマンションに帰る。
帰りの車でルリが突然言った。
「あの…エミさんが、ぴよちゃんが卵だった時に料理を作ってくれた人ですか?」
「ブハッ…なんでエミが出てくる?
エミは家に来たこともないよ。
エミが何か言ったのか?」
「いいえ…昔は、男女の関係だったこともあるって…」
「そんなこと言ったのか、あいつ…」
「隠しても仕方ないからって…
でも今は違うって…」
「ああ、エミは彼女じゃないよ、ってか、俺に彼女がいたことはない。
セフレみたいなもんかな…」
ルリはそれっきり何も言わなかった。
だから、俺もそれ以上話さなかった。