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***堕散る(おちる)***
第37章 step37 三十一段目 地上階2F
昨日、シラスの茶碗蒸しをしたが、よくかき混ぜて蒸したのに、底に溜まってしまっていた。
ルリが旅館での稚魚の茶碗蒸しを思い出せばと思った。
あのときの希望通り、騙したままルリを蒸しあげたことを謝ろうと思ったが、思い出すことはなかった。
「かき揚げですか?」
「そう、それ。混ぜて一緒に天ぷらにする。」
「じゃあ、今晩しましょうか。」
「ああ、他に天ぷらになる食材あるかな?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「じゃあ、予定変更で今日は和食ね。」
ルリが豆を挽き、食後の珈琲を淹れてくれた。
「着替えて出掛けようか。」
ルリにはオフホワイトのブラウスと桜色のカーディガンと少し濃いピンクのスカートを買った。
それを着せて車で仕事場にいく。本当は電車で行きたかったが、ルリの体力を考えると、車の方がよさそうだった。
「さて、出発〜」
重箱に詰めた弁当を膝にのせたルリ。
「どこに行くんですか?」
「秘密〜」
朝のラッシュで道が混んでいた。なるべく電車の行き方に沿って駅付近を通るから尚更時間がかかった。
ルリは車に乗りなれない子供のようにキョロキョロ窓の外を見ていた。