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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
「また、めでたしにはならないな。」
「どうでしょう。
二人も食べた狼は、そのままベッドで眠ります。
そこに赤ずきんちゃんの悲鳴を聞いた猟師がやってきました。
狼のお腹の中で何かが動いているのが見えます。
猟師が狼のお腹をナイフで開くと、丸呑みされたおばあさんと赤ずきんちゃんが無事に出てきました。」
「めでたし、めでたし。」
「まあ、そうなんですが、二人の替わりにお腹に石を詰めました。
目が覚めた狼が喉の渇きを覚え、井戸に向かうと、お腹の重さで井戸に落ちてしまいましたとさ。」
「これでめでたし、めでたしだな。」
「はい。」
「それで井戸に落ちないで…なんだな。」
「ふふっ、そうです。」
井戸よりも狼と赤ずきんのやり取りを考えていた。
あからさまな嘘に騙される娘、平気で騙し続けついには丸呑みする男…
まるで俺とルリのようだった。
そしてあからさまに呑まれたルリ…
今の俺は、その罰で井戸に落ちている最中なのかもしれない。
そんなことを考えていた。
「早いけど、今日の宿についたよ。」
「ここですか?」
昔は東北にある常夏と謳っていたリゾート施設に到着した。