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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
「まずは生牡蠣になります。色々な薬味をご用意してますが、最初は何も付けずに、薬味は左側から味の薄い順に並んでおりますので、お好みのものを付けてお楽しみください。」
岩塩、レモン、醤油、ポン酢、カクテルソースに、青ネギや生姜、紅葉おろしなど沢山の薬味やタレが並ぶ。
「牡蠣は海のミルクとよばれていて、豊富な栄養と濃厚な味わいをお楽しみ頂けます。」
法被に手拭いで髪をまとめ海女の出で立ちをした女性が、テーブルの脇に作業椅子に腰掛け、牡蠣殻を剥いている。
七輪が置かれていて、剥いたばかりの牡蠣を網に乗せていった。
「いただきます。」
勧められたとおりに何も付けずに食べる。
潮の味だけで十分に美味しい。
「ルリ、生牡蠣はどう?」
「とっても美味しいです。」
言いながらもルリの目はテーブルの斜め下にある七輪に釘付けだ。
もしかしたら、女将さんが川魚を焼いてくれたことを思い出してるのかもしれない。
「ハルト…あれ、見たことありますよね?」
近くにいる海女さんに遠慮してか、俺の耳に口元を近づけ小声で聞いてきた。
「うん、七輪て言うんだよ。前に魚を焼いてもらったことがあるね。」