この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
ワタシはちょっと気になって海女さんに尋ねた。
「機械で流れてくる牡蠣を剥いて、大きさを見て、大中小用のバケツに剥いた牡蠣を放り投げる。次の牡蠣を取りながら殻をベルトに乗せる。
バケツに放り投げる時は、まるで肝心な中身がゴミのように思えてね。
横に私たちゃ並んで、次々流れてくる牡蠣を取る。
剥いた牡蠣は塩水に入れられてパック詰めの機械に流す。
鮮度は落ちて食卓に並ぶと思うとさ、養殖やが苦労して育てても、お客さんのところに届くのは、この味じゃなくなってるわけだよね。
ここじゃ新鮮なままの味をお客さんに食べてもらえて、お客さんの顔が見えるんだ。
美味しいって幸せな表情を見ながら剥くなんて楽しいだろ?
だからだよ。」
「そうですね。いつも美味しい顔が見れるんですもんね。」
「それが一番だろ?
さて次はなんにする?」
奥からおばちゃんが嬉しそうにフライを持ってきた。
「せっかくだから、沢山食べてってね。次にここにくるまではもう要らないってくらいにね。」
あははっ…
ハルトが声をあげて笑う。
ワタシもつられて笑った。
こうして、もう食べれなくなるまで色んなものをお代わりした。