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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
ハルトがワタシを包むように腕を回してきた。
薄寒く感じていたところにハルトの体温を暖かく感じた。
「ハルト寒くないですか?」
「ジャンバーを着たからね、大丈夫だよ。ルリは寒い?」
「ハルトにこうしてもらってるから大丈夫です。」
そう答えたけどハルトはシートを手繰り寄せて足元を包んでくれた。
「じゃあ、いくよ。」
「わっ…えっ…」
ワタシ達を取り囲むように沢山のランタンの灯が点いた。
「さ、桜が…咲いてる…満開…綺麗。」
「ああ…綺麗だ。」
「まだ、桜が咲いてるところなんてあるんですね。」
「ああ…桜の開花は北上するんだって…」
「あっ…それで北上って…」
「そうだよ。開花予想はわかったけど、満開の頃合いはわからないからね。
ちょうどよかったんだ。
間に合わなかったら、もっと、北海道まで行かなきゃと思ってた。」
「じゃあ、予定通りの目的地なんですね。」
「ああ、ルリとこうして満開の桜を見たかったんだ。」
ハルトが幹に深く寄りかかる。少し空を仰ぐようになる。
「凄い、桜の雲みたい。綺麗、桜が雪みたいに降ってくる。」
「ああ、本当に雪みたいだ。」
俺はルリを抱き締めた。