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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ

ルリは記憶を失っても去年と同じことを言う。
それでいいじゃないか…
期待しないほうがいい。

ここは山あいの私有地で一面に何十本もの桜が植えられている。

ネットの口コミで得た情報だった。
だからおおっぴらにキャンプは出来ないので、火を使うのはキャンプ場で済ませてやって来た。

ルリは俺の腕の中に収まり、桜の天井を見ていた。

「綺麗だ。」

「本当に綺麗ですね。」

「いや、桜じゃなくて…」

「え?
ハルト…ワタシたち、前にもこうして桜を見たことありますか?」

「思い出したか?」

「いえ、何となくそんな気がしたというだけで…
間違えましたか?」

やはりルリは『来年も桜を一緒に見よう。』と約束したことを覚えていなかった。

「ああ、間違えてないよ。去年、マンションの近くの公園にある一本の桜の木の下で、こうして夜桜を見たよ。」

「花見酒をするか…ルリは梅ジュースだけどね。冷えるからお湯割りにしたよ。」

ルリを起こして保温マグを渡す。

マグを合わせて乾杯した。

「ハルト、大事なことも忘れてしまってごめんなさい…」

「ルリ、気にしなくていいよ。焦っちゃいけない。」

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