この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
「ルリは記憶がなくても同じことを言うんだ。去年もこうしてチラチラと舞い降りる花びらを見て、雪みたいだと言ったんだ。
懐かしいようで新鮮で…
記憶がなくても、人の本質は変わらない。
そんなルリが綺麗だと言ったんだ。」
「ハルト…」
マグからの湯気に頬を染めるルリが欲しくなった。
思わず頬に手を伸ばし、唇を啄んだ。
「ハルト…」
「俺はこっちの花びらのほうが好きだな。
甘くて柔らかい。」
ん…
チュッ…チュクッ…チュクッ…
ルリの手が俺の肩を掴むが力が抜けてズルズルと落ちては、また掴み直した。
「ん…暖まったみたいだな。もう少し花見をしようか…」
「は…ぃ…」
ピンクに染まった頬を撫で、また寄りかからせて夜桜見物を続けた。
「静かですね。」
「誰もいない山の中だからな。」
「この空間をハルトと二人きりで占領してるなんて、贅沢すぎるくらい幸せです。」
「ああ…幸せだ。」
腹ン中に戻りたい、そこが一番幸せだった…と思う俺はいない。
ルリと一緒にいること生きることが…一番幸せだ。
実感してルリをもう一度きつく抱き締めた。