この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
桜木母娘の奮闘記
第1章 敵
日差しはジリジリと音を鳴らし、地面の上では蜃気楼が揺らめいていた。
コンクリートと石畳の場所は、特にだ。
冴子は男の隣に座る。
由美も男の隣に座る。
三人仲良くお茶を飲んでいるように見えて、その両極同士はまるで犬と猿だった。
「美味しいお茶ですね」
「大した物じゃありませんよ。
お菓子もどうぞ召し上がって?」
…もう覚えたわ。
あなたってこういう時は、いつもにっこり笑ってお菓子を貰うの。
ありがとうは口に出さないで、それでも私に伝わるものだから、まるで魔法使いのよう…
『大樹さん、あたしも食べたい』
由美が男の服を引っ張ると、男は由美の方へ顔を向けた。
「だーめ。
これは俺のなんだからー」
『えー、ひどい』
「嘘だよ、嘘。
はいどーぞ」
私は見ているだけ。
彼と由美が親しそうに喋っているのを…
冗談を言えるような人って、あなたにとっては私より由美なのよね。
「由美、まだお菓子ならあるから我慢しなさい」
『…はーい』
いつからこの子は
私にこんな目を向けてくるようになったのかしら。
私のことを、好いてはいないでしょうね。
よくわかるわ、女だもの。
女の目よ。
嫉妬深い猫のような目で私を見てくるの。
私の一人娘は、私をこんな目で見てくるようになったの…